登校拒否を考える親・市民の会(鹿児島) 登校拒否も引きこもりも明るい話


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体験談

2011年10月発行ニュース
登校拒否を考える親・市民の会(鹿児島)
会報NO.181より

登校拒否を考える親・市民の会(鹿児島)では、
例会の様子をニュース(会報)として、毎月1回発行しています。
その中から4〜5分の1程度をHPに載せています。


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やっぱり「心配しないで信頼する」

2011年9月
例会報告(抄)


17歳の息子さんと一緒に暮らすHさんは、今自分のワクワクに夢中です。講習会のために2週間家を留守にしました。その間に息子さんが、それまでまったく口もきかず、会おうとしなかった単身赴任中の父親と自然に話していたという話に、みなさんが感動しました。親子の情愛は何にもまして深いものです。Hさんが息子さんを「心配」しないで「信頼」した結果ですね。

ママ友とのつきあいで悩むまつぼんさん。自分をだまさない、「いい加減はよい加減」のおつきあいが課題ですね。自分に大切にしたい「理想」があれば「妥協」したってかまわないんですね。いっぱい「ふり」をしましょう。

昨年末、くも膜下出血で倒れたしずりんさんの夫は元気に回復されました。「あのとき出たのはため息ばかり。今は私が元気になって夫が一番喜んでいます」と。命が一番、次に元気ですね。

若いヒメちゃんが熊本から参加。アルバイト中の彼女をお母さんがいろいろと心配します。「子どもからするとありがた迷惑。子どもはちゃんと考えてます」という話はどこでも共通しますね。

どんな今も否定しない。
なにかに一生懸命になっていようがいまいが、自分と家族の今を否定しない。
普通だと否定の対象でしかない不登校やひきこもりを肯定できるようになると、それは本当に力になり、やがて外でも自然に活動するようになります。2ヶ月ぶりの例会、今月も感動的でした。




目次


1 2年半ぶりに息子と再会した父   Hさん

2 最後にだますのは自分    まつぼんさん

3 まっ先に「私が」幸せになる(その2)    ジュンさん

4 子どもからするとありがた迷惑?!   ヒメちゃん

5 存分に引きこもる   内沢 達





2年半ぶりに息子と再会した父   Hさん



―――Hさんは、今自分のことに夢中になっているんですね。以前は息子さんの一挙一動に不安がいっぱいでしたものね。不安がなくなって安心がいっぱいになりましたね。屋久島に単身赴任しているお父さんを、息子さんは完全に拒否していたんですが、とてもいいことがあったんですね。


そうですね。息子は今17歳です。退学して1年ちょっとで、あわせて2年半ぐらい家にいます。私は親の会で言われた通り、自分の人生を楽しもう、自分の人生の主人公は自分だと、ワクワクに突進しています。

5月の22周年の集いに参加して、6、7、8月は集中してアロマの勉強に出かけました。栃木県那須で開催されるハーブの講習会にはずっと前から行きたいと思っていて、息子が不登校になりかけのころ私が「お母さんは自分の好きなことをしたい」と話していたので、息子の頭の片隅にあったと思うんですけれど、息子に聞いたら「いいよ」と言ってくれました。

今までは1泊や2泊でもドキドキしていましたけれど、思い切って2週間家をあけてしまいました。(―――すごいじゃない!)1、2泊でも今まではカレーやハンバーグなどいっぱい食事を作って出かけたんですけど(笑)、今回は冷凍庫に入りきらないぐらいレトルト食品を一杯詰め込んで、冷蔵庫にも一杯収めました。犬がいるので犬のことも心配だったんですけど「大丈夫、僕がするから」と言ってくれました。息子の服のことも心配で2週間分14枚下着も買ったんですが(笑)、息子は「洗濯機ぐらい僕がまわすよ」と言いました。

「本当に大丈夫?」と言って、行く前の日、着るものや食料を一緒に確認して、私は飛行機に乗って行きました。でも気になって毎晩のように息子に電話をして聞くと、必ず「大丈夫だよ、どうにか食べているから」ということでした。


―――すごいじゃない、そんなことを言うようになったのね。


そして、「犬のディアも元気だよ。いい仔でいるから大丈夫だ」と言って、「ディア、おいで」と呼んでくれて、ワンワンという声を私は毎晩聞いて「ありがとう」と言いました。その間、単身赴任中の夫がお盆休みを取って屋久島から帰ってくるんので、何かしてほしいことはないかと息子にたずねたら、「無理無理、何もしなくていい」と言うことだったんです。夫は私がいない2週間の真ん中に1週間休みをとっていました。

行って4日目ぐらいに電話をしたら、息子が不安げな声で「食料が心配になってきた」と言いました。冷蔵庫には一杯入っていたんですが、レトルトに飽きてきたんじゃないかと思います。私は「明日、お父さんが車をとりに家に来るので、お弁当を届けてもらおうか」と言ったら、しばらく沈黙して、「ディアの散歩もしてもらえるしお願いしようかな、でも僕は絶対会わない、顔も見たくない」、だからよろしくみたいな感じだったんですね。

すぐ近くにある実家に帰った夫は、それからお弁当を届ける日が1週間続きました。夫は「恋人に届けるような気持ちだ」と言って(笑)。

お弁当を持っていくとリードにつながれ準備された犬が玄関に来るんです(笑)。夫はお弁当を置いて、そのリードを持って1時間ぐらい散歩して帰ると、犬はもう満足して息子のところに行ってしまうんです(笑)。 夫は残されたお弁当の空容器を持って(笑)帰るんです。一切顔を合わせず、声もかけずですね。

それが1週間過ぎたころ、夫が電話で「もう明日は屋久島に帰るけど食料は大丈夫だろうか、足りないものがあったら多めに買っておくから、それを息子に伝えてくれないか」と私に言ってきたので、そのことを息子に伝えたんです。「明日、お父さんは帰るからね」と、そしたら息子は黙っているんです。

私は「いいよね、もうお弁当は明日までだけど、後4日したらお母さんが帰ってくるからね」と言ったら、「えっ、明日でおしまいなの」「ディの散歩も出来ないの」と言うんです。

夫は帰る最後の日にいつものように、犬の散歩に出て帰ってきて犬を放したら、犬がすぐ玄関に戻ってきたんです。「もうお父さんは帰るから、玄関閉めるよ、向こうに行きなさい」と言うんですけど離れなかったんです。

そしたら息子が「お父さん、ディアはおやつをやったら部屋に帰るんだよ」と言っておやつを持って現れてきたんです。(―――へー、すごいね

「ほら、ディアおやつだよ、部屋に帰るんだよ、お父さんは帰るんだって」と犬に、こっちこっちと言いながら、「ほら帰っていくでしょう」と言い、「お父さん、もう帰るの、今日までなの」と聞いたんですって。

夫は「うん、そうだよ、仕事があるからね。暫くしたら、また休みの時は帰ってくるからね」と言うと、息子は「うん、分かった」と言って。

息子と別れて玄関のドアを閉めたとき、夫は号泣し、「涙が止まらなかった」と言いました。夫が息子の顔を見たのは2年半ぶりですね。その前から単身赴任でしたので顔を見ることはなかったんです。「髭が伸びていた、身体も大きくなっていた、少し肥ったのかな」と言い、息子は自分で髪を切るので不揃いで「あの髪をどうにかしたいね、元はハンサムなのにね」と言っていました。(笑)

ほんとに氷が一気に解けたような感じでした。(―――やっぱり親子ですね) 
信じられなくて! メールできたんですが何度も見て、私もずっと涙が止まらなかったです。


―――本当に感動ですね。以前はあなたのお連れ合いさんも、息子さんのことを「こんなんではだめだ」と否定するようなことがあったのね。


息子が私に暴力を振るったりすることがあったので、夫は「それは人間のすることじゃない」と言って、「どこか施設でもやったらどうか」と言ったことも実際あったんですが、「親の会では何も問題はないと言っているよ」と言って、息子を信頼し続けてきて良かったと思います。


―――夫婦仲もよくなったのね。(笑) 夫の下に妻がいて、と縦の関係と言われて信頼が揺らいでしまったこともあったけれど、息子さんの言葉「自分ばかり幸せになりやがって、俺の人生をめちゃくちゃにした」と伝えた時、「それは大変だ」と言う夫に、「それはとてもいいことなんだよ」と言ったら、とても安心されて夫婦の信頼関係も深くなっていったのね。息子さんのおかげですねえ。

娘さんは、お父さんとはどうですか。



娘に、その出来事をすぐ連絡したんです。「お父さんとしゃべったよ」と。娘は「信じられない、それはうそじゃない」と言いました。「私は絶対無理、でも最近どうでもよくなった、別に恨んでもいないし、気にならなくなった、でも話はしない」と言うので、「それはあなたの勝手だよ」と言いました。


―――娘さんとはお父さんとどんなことがあったんですか。


娘は気配を感じるだけでパニックでしたね。いろいろありましたね。いろいろあったんですけど、すべて忘れてしまいました(笑)。


―――ほんとにいいお話でしたね。息子さんもいろいろあったのが辛かっただけで、ほんとは優しい子だったのね。(そうなんですよね) あなたはいっそう自分のことに夢中になってね、それが息子さんにとってはとっても嬉しかったのよね。「お母さんが、楽しそうに堂々と生きている」。それが何よりの息子さんへの最大の支援だということですね。


このまま、ワクワクを突進していいんですよね。(笑)


―――ますます確信を持っていいんです。ただ、息子さんへの食糧調達はもうやめてね。あなたが4日後に帰ったらどうでしたか。


意外にも家の中はきれいでした。ちゃんと洗濯もしてあって、台所はゴミはたまっていましたが私がいるときよりもきれいで(笑)、犬のトイレもきれいにしてあったし、息子もいい時間を過ごしたのかな、心配することではなかったなあと思いました。


―――資格を取ろうと頑張っていらっしゃるのね。


もうアロマアドバイザーの資格を取ったんです。(拍手) 今年の1月から教室に行きました。


―――以前のお仕事で、非常に理解のないことを言われてね。


以前の職場は幼稚園で、園長は小学校の元校長でしたし、「不登校はとんでもないことだ、親が悪い、子どもが悪い、しつけがなっていない」というところですごく悩みました。私のことは一部の方は知っていましたが、不登校ということを言い出せない環境だったんです。


―――Hさんは子どもさん達のことを隠さないで話しているの。


はい、私は言っていますね。






最後にだますのは自分    まつぼんさん



―――小2の息子さんの友達関係で悩んでいるのね。


子ども同士の遊びにその子の母親がいつもついてくるんです。わが家で遊ぶ時はその子のお母さんも来て、その子の家で遊ぶ時は「あなたも来て子どもの世話をして」と言うので、私はそれが嫌で疎遠にしているんですが、「どうして来ないの」とメールが来るんです。はっきり言ってその人が苦手で、私のことを色々言うんじゃないかと思って怖いんです。
息子が「○○君といつ遊べるの」と言うんですが・・・。


―――(内沢達)子どもはそのうちに忘れますから。子どもさんが「○○ちゃんと遊びたい!」と言っても聞き流すことです。「うん、うん。今度ね」と答えておけばいいんです。

何日かして、「お母さん、この間連れて行くと言ったじゃないか!」と言われても、「ごめん、ごめん。また今度ね」と答えたらいいんです。そのうち息子さんは○○ちゃんと遊ぶことよりも、別のことに関心が移ったりします。

子どもが求めたからといって、自分を犠牲にしてまでやるのは、自分のためだけじゃなくて子どものためにもなりません。親として嫌なことがあるわけですから、自分を殺してまでしても、いい結果が予想できないでしょう。また息子さんを否定するのもまたおかしいわけですから、そういうときには、一生懸命聞いたふりをして、じつは聞き流すのが一番です。

板倉さんの発想法の一つで、冊子やニュースでも度々紹介しているのが「最後にだますのは自分」です。僕らはつい、自分のほうがもっと気を遣わないと、あの人から悪く思われるのではないかと、自分で自分をだましてしまいがちです。

でも、他人(ひと)は他人(ひと)のことを、当人が思っているようには思っていないというか、関心がありません。それは、僕ら一人ひとりが自分のことはいつも思っていても、他人のことになると相当に親しい人だって、いつもかつもではないことにすぐ気がつくと思います。その人のことをいくら思っても問題は解決しません。自分に無理をして自分を苦しめない。自分で自分をだまさないために、自分の気持ちを一番大切にしていく。



―――自分が主人公になっていないなと気づくチャンスですね。自分が嫌なことはしない、近寄らない。PTAにも行きたくなかったら行かなければいいんじゃないですか。


そうですね。授業参観だけは子どもが見に来てと言うので行って、ちょっと参加したのですが「夏休みの反省」がテーマで、何を反省するの、という感じで言うことがなかったです。規則正しくラジオ体操に行きました、という話ばかりで、うちの子は1回も参加してなくて夜更かしして遅くに起きていましたから、私は「充実した夏休みでした」と言いました(笑)。どうにか参加したけど次回からもういいかな。


―――(内沢達)「PTAでいったい何を反省することがあるんだろうか?」というのが本音だと思います。僕も、その点は同感です。でも、そんなPTAに真面目につきあうとこちらが疲れてしまいます。そこで、適当につきあう。「夏休みの反省」がテーマであれば、いっぱい反省した「ふりをする」(笑)。ラジオ体操に行かなかったとしても「家族で早起きを心がけました」とか、言えばいいんです(大笑)。いつも自分が気持ちよく過ごすには何がいいのかを一番に考えたらいいと思うんです。テキトーにやるのが大事です。自分に理想があれば、表向き妥協したって全然かまわないんです。


―――「なになにしたふりをする」という言葉、「いいかげんはよいかげん」と同じですね。『朝日新聞』9月4日付の天野祐吉さんの記事の下に、「おとなになった女子たちへ」という湊かなえさん(作家)がいいことを書いていましたので紹介します。

<田舎の長男の嫁です。27歳で結婚し実家は県外で、友人知人は誰もいないという完全アウェイ状態からの生活が始まりました。初めは小さなことから深刻なことまでいちいち心に刺さり3日に1度は泣いていました。しかし、30歳を過ぎたある日、1年以上泣いていない事に気付いたのです。今にして思えば、それが私の女子からの卒業ではないでしょうか。泣かなくなったのは心が強くなったのではありません。人間が大きくなったからでもありません。「聞き流す」「やり過ごす」「なかったことにする」そういう技が自然に身についたからです。まさに三種の神器です。>

私たちの言い方ですれば「聞いたふりをする」「やったふりをする」「するふりをする」ですね。そういうふうにして、一番大事なことは「自分を中心にして考える」ことです。相手に合わせようとするから辛くなる。なんでもそうですね。自分中心ではなく、子どもや夫に合わせようとしたり、周りに合わせようとするから辛くなる。自分の気持ちに嘘をついていくからですね。自分を中心にして考えていく。まさしくこれは三種の神器だよね。天野さん、湊さんの記事は、私たちの生き方にピッタリだなと思って紹介しました。今はPTAの話ですけど、全ての話に繋がるでしょう。「人の話は我が話」で、夫、子ども、周りとの関係で自分を大事にしているだろうかと、とてもいい問題提起ですね。






まっ先に「私が」幸せになる(その2)    ジュンさん



この2ヶ月、我が家はそんなに変ったことはありませんでした。お祖父ちゃんは胃ろうになりましたが落ち着いています。施設がいっぱいの状況で、まだ病院で看てもらっています。


―――どのくらい自宅で看られたの?


お祖父ちゃんが12月に倒れて1月に引き取ったので5ヶ月です。


―――あなたはお祖父ちゃんにずっと一人暮らしのさびしい思いをさせたという思いがあって、奉仕の精神で看ようと思われたんだけれど、前回の親の会で「義父が入院してみると、子ども達と接する楽しい時間ができたり、自分の時間ができたりして、本当の私の気持ち、幸せは今のほうがいいとわかりました。今、家族は自分の時間ができて幸せに暮らしています」と大事な問題提起をされたのね。介護の問題は自分を一番大切にするという点で一番わかりやすいですね。


私は週に2回、洗濯物もあるので見舞いに行くんですが、夫は「見るのが辛いから」と言って全然行かないんです。お祖父ちゃんはしゃべることができないし、天井ばかりを見ているんです。お祖父ちゃんはひとり暮らしをしていましたが、大きなテレビや高価なカメラを買って、自分の好きなことをしていたからよかったなと思います。体にはすごく気を使っていたんですが、病気になって痩せてかわいそうだなと思います。

中学の時に不登校になった長男は20歳になりました。以前は大量に薬を飲んで入院したり、リストカットをしたり、私も最初の不登校の体験でいろいろありすぎて夫婦で悩んで悩んで、辛い思いをしました。二人目、三人目も不登校になり、私は三人目の次男の時が一番こたえました。

娘は私立高校のドリームコースに週2回、放課後に行っています。行けば出席日数に数えられ、後は家で課題をやって提出すると授業を受けたという形になります。ドリームコースの中で学校に行っているのは1割くらいで、ほとんど行ったり、行かなかったりのようです。娘が決めているので私はどっちでもいいからと言って一切口を出しません。授業料は今4万円払っています。

困ったことに中3の次男がそこに行きたいと言っているんです(笑)。前の私だったら行ってくれるんだ、と思って喜んでいたと思うんです。でも今は、朝も遅く起きてくるし、ゲームばっかりしているし、そのたびに「もう行かなくていいよ」と言っています。「お姉ちゃんを見ていてわかるように辛い思いをするだけなんだよ。お母さんは送り迎えはしないし、スクールバスで長い距離を行くのはどんなに大変か」と言うと、息子は「僕は高校からリセットする。お母さん、今どき高校も出ていないと仕事はないんだよ」と言うんです(笑)。

私が「なんとかなるから、大丈夫だよ」と言うと、「なんで僕がやる気を出しているのにそう言うの」と言います。「お母さんは散々見てきたから、どうなるか分かっているの。お姉ちゃんの時はお母さんもわからなくて、うれしくて行って欲しいと思ったんだけど、お姉ちゃんの姿を見て、やっと無理なんだなとわかったの。あんたも行けると思っているんだろうけど、その気持ちもわかるけど、辛い思いをするのはあんただし、そういう思いをしているのをお母さんも見たくない、だったら最初から行かない方がいいんじゃないの」と言っています。
そうすると私の母が「せっかく行くと言っているのに、お金はおばあちゃんが出すから心配しなくていい」と言うんです(笑)。「途中で辞めるかもしれないよ」と言うと、「それでもいい」と言って・・・。


―――別居しているあなたの夫はもうパチンコはやっていないの? 


たぶんやってないと思うんですが、残業と言って遅く帰ってきたり、食事をしてすぐに仕事に戻ることがあるので、もしかしたら寄っているかもしれません。でも今、お祖父ちゃんの年金を私が管理しているので、いざとなったらそこから出そうと思っています(笑)。娘は週末は必ず私と一緒に買い物に出かけて、洋服を買ったり遊んだりしています。それが娘の楽しみでもあり、私の楽しみにもなっています。以前までは洋服に全然興味を持っていなかったのに、最近は洋服が欲しいようで女の子だなあと思っています。


―――娘さんは学校に行っていないことで辛い思いをしているのかな。


やっぱり辛いんじゃないでしょうか。私は娘に「あなた辛いでしょう。だからその辛い気持ちを弟にも話して。行かないほうがいいよ、と言ってもらえない」と言ったら、娘は「私には言えない」と言って黙ってしまいます。娘も葛藤しているのかなと思います。娘は卒業後、バイトをする、一人暮らしをする、パーマをかけたい、などいろんなことを言っていますが、私は聞き流して「その時になってから考えればいいんじゃない」と言っています。たぶん家にいるんじゃないかと思っていますが、それはそれでいいと思っています。


―――お兄ちゃんが「このままじゃだめだ、家を出たい、宮崎に行きたい」と言ったことがありましたね。その時にあなたは取り合わなかったのね。


親に頼んでもダメなんだと悟ったんじゃないでしょうか。私は「やりたいんだったら、すべて自分でしなさい」と言ったんです。「宮崎に行きたいんだったら自分で宮崎に行って家を探しなさい。お母さんは仕事があるからできないし、お金だってないよ」と言ったら、「そんなことできるわけないじゃないか」と言って、それ以来何にも言わなくなりました。自分で頭を短く切って、昼夜逆転して好きなようにしていますが、話をしないわけではないし優しい子です。

息子は父親に、この界隈では自分の知っている人が多いから見られるのは嫌だ、だから宮崎に行ってやりたいんだ、と話したようです。その時は私も知らない土地だったら出来るのかなとちょっと思ったんですが、みなさんに相談したら「どこに行っても一緒だよ」と言われて、親が手助けすればするほど子どもがダメになるんだなと納得しました。


―――あなたは親の会に参加して、自分を大切にするようになりましたね。以前は夫に「子ども達が自分たちではなく他の親の所で育ったならちゃんと成長できたのに」と言われたら、そうなのかなあと自分を責めて反論もできなかった。今は別居しているけれど、その状態の力関係が一番いいのね。

我が子のことがものすごく心配だったんだけれど、気がついてみたら、あなた自身が自分の人生を大切にして生きていけるようになった、私はそう思います。


そうですね。すごく楽になりました。今の楽しみは、朝ルームランナーでウォーキングをして、汗をいっぱいかいてシャワーを浴び、そのあと犬と一緒にひっくり返っていることです(笑)。携帯に昨日のドラマを録画しておいて、それを見ながら優雅な気分で歩いています。以前はエクササイズをしていたんですが、成果が出ないのでウォーキングに変えました(笑)。朝は5時に起きてコンビニの仕事に行き、帰って来て7時半くらいから歩きます。子ども達が「お母さん、昨日録画していたドラマを一緒に見よう」と言って、私は「もういいよ、いいよ」と言うんですが、とにかく録画していたのを私に見せたがるんです。もうたまにはうるさいなと思うんですが…。(笑)






子どもからするとありがた迷惑?!   ヒメちゃん



お久しぶりです。熊本から参加しました。去年の12月に臨時教員として球磨郡の山奥の学校に行ったんですが、先生たちになじめなくて、登校拒否になりました(笑)。このままじゃきつい、鬱のような状態になったので、「辞めます」と言って3ヶ月で辞めました。

またやり直そうと思って教員試験を受けましたが、去年よりも筆記試験はよくできたのに今年は募集人数も減りレベルが高かったのか、1次試験に通りませんでした。去年は1次の筆記試験に通って、2次の面接で自分の考えをしゃべりすぎたようです。2次試験では、水泳や跳び箱、マットの実技があります。ピアノもあって、ピアノは習ったことがないので大変でしたが、練習してやればできるんだと思いました。落ちた分だけ次の準備期間ができたなと前向きにとらえて、今できることをやろうと思っています。


―――落ち込まなかった?


落ち込んだのは母の方で、どうしようかと思いました。とりあえず私は元気にやって行こうと思い、自分の好きなことをするためにはお金を稼がないといけないので、今はお豆腐の料理屋さんで配膳のアルバイトをしています。合気道もしばらくしていなかったんですが、またやりたいなと思って、合気道を最近始めました。


―――彼とも付き合っているの。 


はい、彼は金融機関で働いていたんですが、彼の持っている正義感と合わなくて鬱になり仕事を辞めました。8月から職業訓練に行き、今日は佐賀で公務員の試験を受けてくると言っていました。早く安定しないと結婚もできないだろうからと言って。私は「急がない」と言っているんです、なんとかなるかなと思って。

アルバイトのお金だけじゃひとり暮らしは出来ないので、熊本の実家に住んでいるんですが、今回教員試験を落ちて私はまた来年と思っているんですが、「あなたはこれからどうするの?」と母親がすごく心配するんですね。最近母の傾向がわかってきたんですが、バイトして一生懸命働くか、家にいるならしっかり勉強するか、家事手伝いをするか、何か一生懸命にしていないと安心しないんです。

疲れてゴロゴロしていると「あなたどうするの!」と追及してくるんです。心配してくれているんだなとありがたく思うときと、言えば言うほど母自身にストレスがたまらないのかなと思ったりします。直接「あんまり言い過ぎるとストレスたまるよ」と言ったこともあります。(笑)


―――不安というのは、言えば言うほどそれに支配されて行くのね。


そうなんですよ。今日も皆さんのお話を聞いていて、お母さんたちの子どもへの気持ちはすごいんだなと、子どもの気持ちとして感じました。正直なところ有難迷惑で、今回教員採用試験はダメだったけれど、自分の将来のことは自分でしっかり考えているし、大丈夫だよと言いたいんですが、ゴロゴロしている私の姿を見ると母は不安なようです。父とは私が夜のバイトなのであまり会わないんですが、会った時は「久しぶり!」みたいな感じで、あまり心配の声かけもないんです。かえってその方が楽ですね。


―――みなさんに参考になるお話でした。ありがとうございました。






存分に引きこもる   内沢 達



(家から出ない中3のわが子に、一歩でもいいから家から出てほしいというお母さんの話の後)


息子さんには「外出してもらいたい」とのこと。普通だと「親御さんのもっともな思いですね」となるのでしょうが、僕らの会の見方はちがいます。

相田みつをさんの言葉に「そのままでいいがな」というのがあります。大人も子どもも、人間はみんな「そのまま」でいいのだと思います。「そのまま」でいけないのは、他に害をおよぼすような「そのまま」です。そうでなければ、個人のありようとして、どんな「そのまま」にも、すべて価値があります。外で元気に活動しているのもいいし、家に引きこもっている「そのまま」もいいんです。

先ほどのKさんの息子さんの場合だと「カードゲームに夢中になっている」のもいいんです。不登校や引きこもりは、そのほとんどが「問題でもないことを、問題だと思い込んで、“そのまま”を認められなくなっているところに、本当の問題がある」んです。

僕は鹿児島の親・市民の会15周年記念誌に「どちらに転んでもシメタ!」を書き、この春の緑色の冊子にも収録しています。いまを否定しない。不登校はもちろん、引きこもりも、今そうしている自分やわが子を否定しない。「何年引きこもっても、たとえ10年、20年でもかまわない」といった受けとめ方ができるようになると、その引きこもりは大きな力になり、やがて自然に外に出るようにもなります。

ところが、「引きこもりはいけない。早く外に出られるようにならなくては」といった、いま・現在を否定する考え方では、そう思って、それなりに努力してもなかなかそうならないことから、さらに自己否定を強め、悪循環になって、結局引きこもりも長引かせてしまいます。

不登校はもちろんのこと、引きこもりもとても貴重な体験なんです。外に出ない、出られない今を否定しないで、存分に引きこもったらいいんです。今を否定しては今が暗くなるだけでなく、明るい明日もきません。どんな今でも、その今を受けとめて生きる。すると、どんな明日が来ても、その明日の「今」を生きられます。

緑色の冊子に「私は、僕は、今どうしたらいいの?!」という記事があります。そのなかの6番目が「将来が不安だ」ですが、この部分だけ、タイトルを「いまを生きる」に変えて、水色の冊子のほうには独立させて収録しています。「いま、現在を一生懸命に生きる」とはどういうことか、述べていますので、どちらでもいいですので読んでみてください。

「そのままでいいがな」。「そのまま」にはいろんな「そのまま」があります。
「そのままじゃいけない」とも思っているのですから、それだって「そのまま」の一つです。

どんな自分の「そのまま」も自分に違いないのだから、自分に親切にやさしくしてあげましょう。人間に迷いはさけられません。迷いを迷いのままで終わらせないためには、いろんな自分の「そのまま」を認めてあげて、予想をたててやってみることが大事です。

予想どおりだったら、その考え方に自信をもっていいし、予想通りにならなければ(一回だけでなく、何回もとなれば、いっそう)予想を変更しなければいけないときなのです。そのあたりについて、5月15日の講演の終わりのほうで述べていますので、これも読んでみてください。





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最終更新: 2011.11.15
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