体験談
2006年1月発行ニュースより。
登校拒否を考える親・市民の会(鹿児島)会報NO.118
登校拒否を考える親・市民の会(鹿児島)では、
毎月の例会の様子をニュースとして、毎月一回発行しています。
その中から毎月2割から3割程度をHPに載せています。
体験談(親の会ニュース)目次はこちら→
2006年1月発行ニュース(会報)より
「いい顔してるね!!」
新年おめでとうございます。
今年も親の会をとおして、支えあっていきましょう。
鹿児島の親の会が発足して、今年5月で17年になります。
あっという間の16〜17年間、そして中身の濃い年月でした。
親の会で自分の人生を大切にすることを学んできました。
辛いと思ったことが、実は自分の幸せに気づく大事なチャンスなんだとわかってきました。
家族の「笑顔」が増えていったことに心から感謝です。
さて先月・12月の例会の様子です。
「この頃いい顔してるね、と妻から言われたことがなによりうれしい」とGさん、「夫の退職、娘の高校中退から、自分の人生を大切にしようと気がついたんです」と妻のGさん。
「いい顔してるね」と褒められたというまいちゃんも、「顔って気持ちが表れるものなのね。日に日に楽になって、いいなあって。悲しいことがなければ、この会に出会わなかったし、辛いことがあったからこそ幸せだなあって」・・・。
Nさんも「親の会に出会って自分を大切にしようと思ってから、自分の人生は大きく変わった」という。
荒れる息子を抱きしめて「安心しなさい、学校に行かなくていいんだよ」と言ったHさん。
毎日の暮らしのなかから幸せをたくさん発見しているKさん、などなど・・・。
みなさんのお話に心から感動しました。
親はどう生きていったらいいのか。
長谷川さんは「我が子が自分で選んだ人生。決して手を貸さなかった。
辛くても、答えは子どもが自分で出すもの」と親の覚悟を話しました。
親の会は親自身の生きかたを学ぶところ。
親の不安とどう向き合うかということも、ひとりぼっちにならないで考えあうところですね。
最後に、まっこさんの「親は子どもが学校に行かないことに悩み苦しむけれど、子どもの本当の苦しみに向き合っていない・・・」と、甥ごさんの死をとおしての言葉が重く胸を打ちました。
1 自分の人生が大好きです! Nさん
2 毎日の暮らしが全部うれしくて・・・ Kさん
3「高校進学」に私の気持ちが揺れます Mさん
4「お母さんが放っておいてくれたから、
・・・僕は充実・・・」 Tさん
5「この頃、いい顔してるね」と言われて・・・ Gさん
6 荒れる息子を抱きしめて Hさん
―――(内沢朋子):今年1年無事終えることができそうで、心から幸せを感じています。
皆さんありがとうございました。
私達は毎月の会の様子を会報で皆さんにお伝えしていますが、会報には大事な教訓がたくさん詰まっています。
会報を作るにあたっては、皆さんにもっと分かっていただけるようにと、何度も読み返しながら、私のつたない話には補足をしながら丁寧に作っています。
ですから会報を会の中心に置いて、お手元に届きましたら是非読んで頂きたいと思います。
1 自分の人生が大好きです! Nさん(19歳)のメールから
最初に、Nさんからメールをいただきましたので紹介したいと思います。
Nさんは高校時代に学校に行けなくなって、朝家を出るんですが、1日中どこかに身をひそめて過ごし帰っていったり、保健室登校もしました。
私と会ったときは腕いっぱいにリストカットをして、ご両親は学校に行かないことを受け入れてくれなかったのでいつも泣いていました。そして短大に入学し、とうとう全てのエネルギーを使い果たし、休学するようになったという経過がある若者です。
……………Nさんからのメール………………………………………………………
思い起こせばちょうど一年前私は泣いてばかりいました。
自分を否定して暗闇の中をさまよっていました。
親の会に出会って自分を大切にしようと思ってから、私の人生は大きく変わったと思います。
自分を否定している時は気づくことができなかったけれど、どれほど親や周りの人たちに愛されていたか…それに気づくことができている今すごく幸せです。
だから私の中から優しい気持ちが溢れてくるのだと思います。
私も親や友達や周りの人たちを大切だと、愛しいと思えます。いつもいつも気持ちが穏やかなわけではないけれど、それが人生だと自分で納得できる時もあります。
今のバイト先では本当にのびのび仕事をさせていただいていて、私の笑顔や素直さを褒めてくださる時があるんですけど、ありのままの私で仕事ができているのでそういう風に言ってもらえることが素直に嬉しいです。
今本当に毎日が楽しいです。
自分の人生が大好きです。
イライラする日もつまらないと思う日ももちろんあるけど。自分の人生を自分の意志をもって自分の足でちゃんと歩んでいる気がします。
私はありのままの私で大丈夫!そう思える自分がいるのできっと大丈夫なんだと思っています。親の会に出会えたことに心から感謝しています。
………………………………………………………………………………………
自分を受け入れるようになると自分が大好きになっていくんですね。
自分の人生も心から好きになっていく。
そうすると心からやさしい気持ちがあふれてくるんですね。
人と人との交流でも、相手に対する思いやりでも、やっぱり自分に対して大好きだという気持ちがなければ決して芽生えない、自分を自己否定していては相手を大切にしたいという気持ちは芽生えないと思うんですね。
ですから私たち親は、我が子に対してどれだけ無条件にやさしく、いつくしみ、大切にして愛することができるか、ということだと思うんです。
私は今回の夫の病気でその気持ちをなお一層強くしました。
大変な病気で命をなくすかもしれないとまで言われ本当に大変だったんですが、でもあれがあったから今の幸せがどれ程大切なものかと心から思っています。
Nさんのメールというのは本当に大切なことを言っているなあと思います。
2 毎日の暮らしが全部うれしくて・・・ Kさん
―――HPの掲示板にダスママKさんが、「毎日の暮らしの中にたくさんの幸せがいっぱいある」と書き込みをしてくださいました。
どんな生活をしているのかお話してもらいましょうね。
(Kさん):普通の専業主婦と母親をしています。
ここ1年くらい、誰かとお茶を飲んだり、買い物に行くということより、どちらかというとひとりで過ごすことのほうが好きで、それがすごく楽しいんです。
小6の不登校の息子が家にいますので、まるっきりひとりというわけではありませんが、普通に家事をしながら気づくことがたくさんあります。
観葉植物の成長がうれしかったり、犬のダスが寝ている姿を見るだけで幸せな気持ちになったり、ひとりでお茶の時間を作って楽しんだりもします。
いつもダスが、遊んでと来るので邪魔されてほとんどお茶も冷めているんですが…。
たまには色鉛筆と画用紙を出して絵を描いたり、こういう自分の時間を楽しもうと思っているんです。
お花が咲いてもうれしいし、すごく小さなことに幸せだなと思えることがたくさんあるんです。
さっき犬から学ぶと言われましたが、私もダスから学ぶことがたくさんあります。
私がパパのことで腹を立てていても、ダスはパパのところに好きと伝えに行って、犬は選ばずに同じ愛情を示してくれるんです。
そういうのを見るとすごいなと思うんです。人間は腹が立ったとか、こんなことをしたとか思うと、イライラしたりしますが、犬はそんなことないんです。
玲子ちゃんとメールのやり取りをしてうれしかったり、そうするとその後もうれしい気持ちが続いて、それが幸せな気持ちに繋がっていきます。
家にいて幸せと思ったときには、家族に優しくしている自分がいます。
イライラしているときは些細なことで不機嫌な返事をしたりしてしまうことがあります。
でもそんなときでも、朋ちゃんからいただいたメールを開いて読み返してみるとその気持ちが落ち着いて、幸せを思い出せる場所に戻れるんです。
自分が不安になったときはどうしてかなと考えて自分と話をします。
答えが出たり出なかったりしますが、答えが出なくってもまあいいや、そのうち不安がなくなるわ、と思っています。
洗濯が終わったら何をしようか、ご飯は何を作ろうか、皆何が食べたいかなと考えたらまた幸せな気持ちになって、家にいて子育てして、家事をして、ダスと遊んでいるだけでいろんな発見があって、それが全部うれしくて幸せだなと思います。
自分が作ったご飯がものすごくおいしかったりすると皆においしいでしょう、と自慢して幸せになります。(笑い)
―――大発見ですね。
あなたはお若いときに自分のことを粗末にして、突っ張っていたんですね。
アルバイトをしても続かないと周りから否定され、そして自分自身も否定していた。
結婚したときもいろいろありましたね。
そして息子さんの不登校のことでも周りから攻撃されてずいぶん悩んだ時期があったけれど、でもその分今の幸せをとても大切にされているのですね。(はい)
私はKさんのHPの書き込みを読んで、毎日の生活の中にたくさんの幸せを発見していることに感動しました。
3 「高校進学」に私の気持ちが揺れます Mさん
(Mさん):中3の男の子です。
去年の今頃から学校に行かなくなりました。
今は昼夜逆転の生活をしています。Kさんのお話を聞いていいなと思って感動しました。(涙)
先週、担任から電話で「私立高校の願書の締め切りがあるので、三者面談をしたい。私立高校か通信制高校のどちらかひとつを選ぶように」と言ってきました。
私たち夫婦は、息子が中学には行かなくても、来年4月からは高校に行って欲しいと思っていましたので、そのどちらかを選択して欲しいと思っていました。
でも私はちょっと不安になり木藤さんに電話で相談しましたら、「あとひとつ学校に行かない選択も入れて話をしてみてはどうですか」と言われました。
それを聞いて、高校に行く気がないのに言っても、一緒だなと思いました。
本人の気持ち次第だなと思うようになりました。
―――家にいることにそろそろ覚悟を決めていらっしゃるの?
(Mさん):それでも3月まではまだ3ヶ月あるし…(笑い)。
息子には高校のことは嫌がるかなと思って、まともに聞けない雰囲気ですね。
でも学校から電話があったので、考えておいてねと言いました。
息子は「う〜ん」という感じで明確な答えは返ってこないです。
―――それが答えです。
行こうとはしないと思いますよ。
たとえ行ったとしても籍だけ置いて行かないと思いますよ。籍だけ置くことは、魚の骨がのどに引っかかった感じなのよね。すっごく嫌よね。
その骨も大きくて、カッと引っかかってるのね。
でも、親御さんとしては籍があるんだから行ったらどうなのとか、私立なら5万円払っているんだからもったいないとか、未練が出て子どもを追いつめます。
籍を置くことは、子どもさんにとっては負担なんです。
だからご両親が早くに納得されたら、子どもさんもそれだけ早く楽になると思います。
子どもは「学校に行かないと自分はだめになる」と思っています。
そして、行けない自分を追い込んでいきますよね。
そのうえ親に心配をかけていると思い、いっそう自分を責めます。
学校に行かないことはなんでもないことなんです。しかし、行かない自分はだめだと自分を否定する、この自己否定の辛さね、それが辛いんです。
「もう家にいるのが当たり前」と、そういう気持ちになっていくといいですね。
そうやってお母さんも楽になっていくといいですね。
息子さんの人生をなんとかしようとは思わないで、毎日の暮らしを大切に幸せに過ごすことです。そういう意味でKさんのお話に感動されたでしょう。
同じように、我が子も自分の人生を大事にしたいと思っています。
自分の人生が「これじゃダメだ」と思っている我が子に対して、「あなたのあるがままでいいんだよ。あるがままのあなたがお母さんは大好きなんだよ」って、言えるためには自分自身の人生を大切にしていないと出来ないことですね。(はい、本人の気持ちを大事にするだけですね) そうです。
―――(木藤):最初は息子さんの不登校のことが心配で心配でたまらなかったけれど、この親の会で学んで息子さんの気持ちを大事に考えていったら、すごく息子さんが明るくなって、会話も出来るようになり、このままでいいと過ごしてきた。
けれど中学3年の12月になって、学校から高校進学のことで連絡があると、ご自分としても高校の行ってもらいたいという気持ちがあって、そのことで不安になってきたということなんですね。お茶して楽しむことということよりも、中学生の男の子の姿を見ると涙が出てくるという状況になってしまったんですね。
この親の会でも、そんなふうに周りの期待があって高校に入学したけれど、入学式のあくる日から行かなくなったという体験や、通信制なら行けるかもしれないと無理をして行ったために、最初の不登校の時よりもずっと自己否定を強くしていったという体験を電話でお話したんです。
(Mさん):学校からそろそろ電話がかかってくるんじゃないかなあと思っていたものですから。
でも最近は受験戦争に巻き込まれてなくて、ある意味でいいかなと思ったり、でも、やっぱり行って欲しいと・・・。でも、本人の意思が一番大事ですものね。
―――(内沢達):木藤さんから言われて、息子さんに「考えといて」と言った中味はおっしゃったの? (夫が「高校のことは考えとけよ」とそれだけです)
それは息子さんにとってきついですよ。
学校の先生からも言ってきたから「考えといて」という言い方ではね。
中3だと、高校に行くのが当然だと思っているわけですからね。
だから、息子さん自身のことだから息子さんが決めていくことではあるんだけども、その選択肢に木藤さんが言ったことをぜひ含めてあげて欲しいです。
「行かないという選択肢もあるんだよ。15歳になったら当然高校に行くと思わなくていいんだよ。自分が高校に行きたい、本当に勉強したいと思ったとき行っていいんだよ」と。
それも入れた上で、今は高校に行かないということも考えて選ばせたらいいですよ。
ただ、どうすると言うだけじゃすごく辛いです。(そうですね、分かりました)
4「お母さんが僕を放っておいてくれたから、
この一年は僕の人生の中で一番充実した年だったよ」
Tさん
―――今日は千葉からTさんがお見えになりました。寒い中、遠いところからご苦労様でした。1年間泣き明かした「泣き虫まあちゃん」がこんな風に変わりましたということを皆さんにお伝えしたいと思います。すごく大切なことを教えてくださったと思います。彼女からのメールは1日に多いときは4回と毎日のようにメール交換が続いています。自分が思っていること、感じたことを書くということは大事ですね。書くということでこんなふうに気持ちが整理され、楽になっていくんだといっそう確信しました。
昨年の今頃、息子さんが高校を中退するかしないかの瀬戸際で、あなたは泣いてばかり、あなたの夫も暗い顔をしてタバコを吸ったり、息子さんももちろん辛くて、家の中がほんとに暗かったと思うんです。メールの内容はそんな感じでした。
そして鹿児島のHPに出会い、5月に親の会に参加されたんですね。泣き虫まあちゃんが息子さんの高校中退のお陰で人生を深く考え、家族の愛をいっそう深く感じて楽になっていった時、家族が変わっていかれました。見方を変えれば、不幸だと思っていたことは大きな間違いで、大きな幸せをもたらしてきたことに気づいていかれたんですね。
ご夫婦で夏の北海道旅行されたり、ジャズシンガーの綾戸智絵さんのコンサートに行かれるなど、楽しんでいらっしゃる。彼女からのメールをご了解を得ましたので紹介します。
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幸せは自分でつくるもの
●December 14, 2005 7:30 AM
不幸だと思っていたことが、人生を考える転機になる・・・ 本当にその通りだと思います。
私は、長男 が折角合格した中高一貫校を退学する・・と聞いた時に、合格した時点で将来が保証されたような気持ちになっていたので、何が起こったのか信じられない気持ちで一杯でした。
夫が転職したいと言った時にも、何故この時期に・・(長男 が、学校に行けなくなった時期で夫の父が癌で余命いくばくも無い・・といわれた頃だったので)こんなことがあっていいのだろうか?なぜこんな事に?と涙の無い日はありませんでした。
でも、息子のお陰で自分の人生を自分らしく生きることを知り・・夫の転職も(お給料は減りボーナスは・・・?)今ある中で生活する術を学び、日々いろんな体験をしています。世の中何とかなるものだな・・・と、毎日色んなことを学んでいます。
もし、息子のことが無ければ、きっとこの状況は、家庭を殺伐とした物にしていたと思います。天からこんな不幸が、降ってきてしまった・・・などとは思わず、何とかなるさ・・・”と、家族で楽しく暮らしています。心に余裕が生まれたのです。
もちろん不安が無いわけではありません。でも・・こんな状況も笑い話にしてしまえる我家になりました。お互いに言いたい事を言っても、何だか喧嘩にならないのです。
●December 15, 2005 7:31 AM
雨の日も風の日も毎日いろんなことがあるけれど、少し不安になった時には、頂いたメールや自分のメールを見返して、今のせを思います。お仕事で外に出ているので、意識しなくてもつい、人の事が気になったり比べてしまって、不安に思うことがあります。
でも、こうして無事に1年を終えられることに感謝して生活していけばいいのかな・・・のんびり焦らずこのまま生活していけば、間違いないかなと思えるようになりました。
退学当初は、私自身が辛くて辛くて子供のことどころではなくて、玲子さんや愛実さんの言葉が、とても心に響いてきました。今は、やっと落ち着いて 今を楽しんでいらっしゃるじぇりさんやKさんのお話が、理解できるようになってきました。
毎日読んでいる会報なのに、その時々で読み方が違います。心を打たれるところが違ってきています。
感謝の気持ちを忘れては、何事も間違ってしまいます・・・。
今日の幸せに気がつける
私でいつもいられますように・・・・・♪
● January 01, 2006 6:55 AM
あけまして おめでとうございます♪
今年もよろしくお願い致します。
昨年鹿児島から帰ってきてから、2週間毎日残業で忙しい日々を過ごしていました。その間、疎かになりがちな家事も大目に見てくれて、大掃除を手伝ってくれた家族に感謝の毎日でした。
今朝夫は早朝から”走友会(マラソンの会?)”の練習に出かけ、長男 は年賀状のバイトに、次男は私の実家・・・で、私はのんびり家で、くつろいでいます。
31日の大晦日に、何て幸せな1年だったのでしょう・・・と思えたことに感動していました。
長男が、”今年は僕が17年間生きてきた中で、一番充実した1年だったよ・・・。うちは、お母さんが、 僕のことを放っておいてくれて干渉したりしないから、すごく居心地がいいよ。”って言ってくれたことも、とても嬉しかったです。
生きていればこそ・・・という言葉の意味をかみしめつつ新年を迎えることが出来ました。夫が、帰ってきたら初詣に2人で出かけます。
今年も幸せな1年となりますように、お祈り申し上げます♪
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(Tさん):今年(2005年)1月に、3月は高校を退学するかしないかを決めないといけないというときに、私自身が自分が辛くて辛くて、どうして分かってくれないんだろう、という気持ちで夫と接していましたので、話をするとけんかになってしまっていました。結論が出ないということが分かってはいたのですが、でもここで話し合いをしないといけないと思っても、ふたりだとまたぶつかってしまうので、私の父に仲介役になってもらい、電話でそれぞれ言いたいことを全部言いました。そのとき父にはちょっと冷静に自分の考えを言えたと思います。父を中に入れたのであきらめないで夫も自分の気持ちを言え、その話を聞いたところ、私だけが子どもに対する愛情をもっているのではなく、方向は違うけど夫も一生懸命考えてくれていたのだというのが分かりました。
それから鹿児島のHPを読ませていただき、私が泣いていたら家族が困るんだと思って、それでもしばらくはやっぱり泣いてしまうんですが、泣くと夫がとても辛そうな目で見るので、泣かないように頑張ってみるんですが、歌を聴いても何をしても気がついたら泣いてしまっているんです。どうしても、助けてほしくて、5月に思い切って鹿児島の親の会に参加しました。
―――どうして涙ばかりだったんですか?
(Tさん):世の中、すべてが辛くて何を見ても色がついてない状態でした。どこかに消えてしまいたいと思ったこともありました。
でも、HPだと皆さんがとても笑顔で話してらして、元気になって生活していらっしゃる感じがして来てしまいました。
ここで自分を大事にすることが大切なんだよと教えて頂いて、じゃあ自分のことだけやってみるのは出来るかなと思って、それをしてみると楽しくなってきたんです。それで、ふと周りを見ると、息子になんてことをしたのだろうと思ったんです(涙ぐむ)。息子は何ヶ月も家にいるのに、まだすごく辛そうだなと思って、私だけ楽しんでも幸せではないと思ってしまいました。メール交換で色々元気を貰って、もうちょっと頑張ってみようかなと思いながら生活していたら、自然に自分に元気が出てきて心に余裕がでてくるようになりました。
夫は私には押さえていても、息子には「これからどうするんだ」と何回か言いました。そのとき私に余裕が出てきて、あっ、夫も不安なんだなと思って、今まで夫に私の辛さを全部受け止めて欲しいと思っていたけど、それは違うのだと思いました。
今までは泣いてばかりで、家族に支えてもらってきたんだと気がついたので、これからは私が夫や子どもの支えになってやりたいと思うことが出来、相手の気持ちを受け止めるようになったら、私の気持ちも受け止めてもらえるようになってきて、そしたら気持ちがお互い通じるようになってきたんです。
結婚以来、8月に夫婦で初めて箱根へ旅行しました。いつも一緒にいる人なので平気だと思っていたら、ほんとに二人になっちゃたと思ったら、すごくドキドキしたんです(笑い)。どうしましょうと思って(笑い)。食事もおいしいねと言える人がいると思うと、こんな幸せがあるんだなと思って。夫も気持ちが楽になってきたのが感じられて、今度は北海道に2泊3日で楽しく旅行に行ってきました。帰ってきて夫がとてもいい顔で幸せそうです。
―――あなたが泣き虫まあちゃんを返上して幸せそうだから、家族が幸せになっていったのね。そしたら息子さんはどうなりましたか?
(Tさん):今までは、学校の話はしないようにとか、こういう話題はしないようにとか、下の子の来年の受験の話もしたらいけないような気がしてたんですが、気がついたら平気でなんでも話ができるようになっていました。
息子は私が知らないうちに手紙を出して、郵便局のアルバイトをすることになったんです。私が働いているので、朝は「いってらっしゃい」、家に帰るといつも「おかえり」と言ってくれ、疲れているときはお風呂も沸かして待っていてくれた子が、帰ってきてもいないのだと思うと寂しくなってしまいました。
―――この1年間で気持ちが楽になって、気がついてみたら家族みんながニコニコしてることを発見したのよね。(はい) すごく大事なお話ですよね。自分自身が変わっていけば必ず家族をも変えていける、いいお話、かわいらしいお話ですね。
彼女はボロボロになるほど会報を何度も読んでくださっています。皆さんも是非お読みくださいね。
5「この頃、いい顔してるね」と言われて・・・ Gさん
(Gさん・夫):娘は高校中退後家でゆっくりしていましたが、今は自分から塾に行きたいと言って1週間に2回行き出しました。
今、皆さんのお話を聞きながら、私も同じだったなあと、この1年を振り返ったところでした。今のTさんと同じで「どうにかなるさ」と私も以前言ったことがありました。もうひとつ、私の父親が病気で、それの手続きなど忙しくて、ああ、状況が似ているなと思います。
そんな中でも一番嬉しいことは、私はこんな顔なんですが、妻が「この頃いい顔してるね」と言ってくれたことなんです(笑い)。それが非常に嬉しくて、私も心の余裕が出来てきたんだなと思っているところです。
―――ほんとにそうですよね。自分の気持ちを変えていけば、見方が変われば状況が変るんだよね。随分と悩まれたのですが決断して、9月にお仕事を辞めたのですね。
(夫):はい。以前は時間に追われっぱなしだったんです。でも今は、一日一日がもう少し時間が欲しいなあと思えるんです。
(妻):夫は9月に仕事を辞めました。9月に旅行に行ったとき、日本で初めておみくじが出来たというお寺で、何の気なしにおみくじを引いたら私だけ「凶」で、凶の人はお坊さんが見てくれるというので見てもらいました。
そこで「あなたは、娘さんにもご主人にも期待をし過ぎていませんか?」と言われました。そう言われてみれば、結婚して私は最初の子を流産してから仕事も辞め、夫と子どものためにと家で一生懸命やっていたので、夫はもっと上へのぼって欲しいとか、娘にはもっと勉強を頑張ってほしいとか期待していたんです。そのことをずばり指摘されて、自分の人生を大事にしてなかったなと気づいたんです。(―――よかったですね) はい。
ショックだったんですけど、それでスーッと気持ちが軽くなって、夫は夫の人生であり、娘は娘の人生だと、この会でも言われていましたけど、ああ、ほんとだなとすごく感じました。以前は夫にも、退職するとは分かっていても途中で辞めないでもう少し頑張って欲しいのにとイライラしていましたけど、夫も精一杯頑張ったんだから、娘にも精一杯学校に行って辞めても今は楽しそうだからまあいいかと思え、こういう気持ちになったら、すごく自分も楽になったんです。
そういうときに私が昔働いていた仕事の講習会が1カ月間あって、参加してみました。そこでの講師が「何も与えないほど、与えるものは大きい」とおっしゃったんです。内沢さんがいつも「子どもには何もしないと、するようになる」と言われてましたので、良い言葉だなと思いました。今まで夫にも娘にも「あれしたら、これしたら」と手取り足取りで言っていましたので、これじゃいけないんだと、改めて1年経って分かった気がします。(―――分かるまで時間がかかるよね)
かかりますね。最初は、娘の退学を内沢さんに「高校を辞めてよかったね。おめでとう」と言われたときはすごくショックでした。高校を辞めたのにそんなこと言われるなんて、初めてでした(笑い)。今は、あのまま行っていたらと思うとね…。今やっとわかるようになってきました。
―――娘さんが退学したことで、すごくたくさんのものを得ることができましたね(はい)。たくさんの苦しみがあったけど、だからこそ、それ以上に素晴らしいプレゼントがたくさんがありましたね。
(妻):多分あのままいっていたら、熟年離婚じゃないけど、夫のことも考えられなくなっていたのではと。夫は退職後とても優しくなって、まあるくなって、頼まれなくても掃除をしてくれ、新婚時代の夫みたいなんです(大笑い)。今だったらたとえ夫がボケても(笑い)、義母が認知症の義父を世話しているように、私にも出来るような気がして、今は二人から色々教えてもらっています。
―――そうよね。それもやっぱり娘さんの不登校から学んだことですよね。夫の人生も、そして自分の人生も大切にできるわけですね。
6 荒れる息子を抱きしめて Hさん
―――息子さんが中学から不登校で、いったん私立高校に受かったけど行かなくて、その後家庭内暴力がお母さんにあって、色々大変だったんですよね。
(Hさん):はい。妻だけではなく、息子は私にも暴力を振るっていたんですが、私は4月に腰を痛めてしまい、そのときも家庭内暴力があったので、実家に1ヶ月帰っていました。しかし、これではいけないと思い、腰痛が治ったので我が家に帰りました。今までは暴力が始まったら逃げていましたけど、今度あったら逃げないようにしようと思っていました。案の定、夜中に部屋に入ってきてキックをかましたので、つかいみあいになりました。そのとき私は息子を抱きしめて「安心しなさい。学校にも行かないでいいんだから、ゆっくりしようよ」と言いましたら、変化がありました。まだ、会話はないんですが、そのまま4人で暮らせるようになりました。
―――それは良かったですね。食器棚から何から全部ひっくりかえして、ラッキョウ漬けのビンまで割ったとか、家中が大変だったというお話でしたよね。
(Hさん):そうでしたね。一時は会話すら出来ない状況だったんですが、今は息子から私に話をするようになり、食事も家族一緒に出来るようになりました。
先ほどのお話の方と同じで、内沢さんが「親が何もしなければ、するようになる」ということでしたので、妻とも静かに見守っています。夫婦間で二人とも優しくなって、うちの場合は妻が先に優しくなって(大笑い)、こういうようなことがあって、ほんとに良かったなと思っています。いま子犬をうちの中に飼っていて、家族わきあいあいとやっています。
(―――以前からしたら考えられないですね)あのときは、なんだったんだろうと思って。 (―――お父さんが抱きしめたのが良かったですね)はい、今は幸せを感じています。ここで皆さんのお話を聞けて、親の会が役に立ったなと思っています。 (―――それで息子さんには学校に行けとはおっしゃらなくなったんですね。)はい。
―――(内沢達):前のこと、息子さんに謝ったんですか?
(はい、謝りました。過去を清算する形で)(笑い)。ずっと前に、息子さんが小さかったときに学校に行けと言って息子さんを叩いたこと、そこも謝ったんですか?
(いや、そこまでは。)そこまで言ってほしいんですね。
―――でも、今はそうやっておつれあいさんからも優しくされて、そういうふうにされたらあなた自身も優しいお気持ちで過ごせることが出来るでしょう。(そうですね、自分のためにもなったようです)では、いまはいそいそと自宅に帰られるんですね。(そうですね、前は家に帰るのが苦痛でした)
それはあなたに限らず皆そうです。優しくし合うとどんどん優しさが膨らんでいくのよね。