登校拒否を考える親・市民の会(鹿児島) 登校拒否も引きこもりも明るい話

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内沢達「登校拒否、引きこもり」論集

 『自分が自分の主人公! まっ先に幸せになる!』

目次はしがき



目次


はじめに ……………………………………………………………… 1
自分自身のかけがえのない友となる ……………………………… 6
「しない」と「する」ようになる ………………………………… 16
一人称でいつも自分自身について話す …………………………… 23
つまらぬ自分 すてきな自分 ………………………………………… 30
子どもの「ために」ではなく,子どもの「立場で」考える …… 37
とても辛いことだってじつは明るい ……………………………… 44
私は,僕は,今,どうしたらいいの?! ………………………… 51
「ダメな自分」も認められるようになると元気になる ………… 74
「心配」しないで「信頼」する …………………………………… 86
不安を否定しない …………………………………………………… 92
問題であって問題じゃない ………………………………………… 97
子どもは自分で解決していく力を持っている …………………… 102
家の真ん中に「15周年記念誌」を置こう! ……………………… 110
どちらに転んでもシメタ! ………………………………………… 116
わがままが肝心! 自分を一番大切に ……………………………… 122
登校拒否を法則的に考える ………………………………………… 127
ことわざ・格言と登校拒否,ひきこもり ………………………… 146
子どもの不登校と教育を受ける権利 ……………………………… 186
専門家を頼るのはやめよう ………………………………………… 201
登校拒否は明るい話 ………………………………………………… 209
不登校・家庭内暴力を考える ……………………………………… 216
隠さないで,親の会のニュースは堂々と! ……………………… 220
自分を大切に(内沢朋子) ………………………………………… 224
不安を大事にする(内沢朋子) …………………………………… 226
2005年秋のこと ……………………………………………………… 229



はじめに


この5月に「登校拒否を考える親・市民の会(鹿児島)」は22周年を迎えます。この機会に,僕が登校拒否や引きこもりについてこれまで書いてきたものを1冊にまとめることにしました。僕は筆が“超”遅い人間です。普通だとなかなか文章になりません。でも,「親の会」世話人の木藤厚子さん,渡辺笑さん,瀬戸山恵美子さん,川島和子さんが毎月,例会での僕の話もテープ起こしをしてくださったおかげで,結構文章が揃ってきておりました。世話人のみなさんにお礼を申し上げます。


さて,今回読み直してみて,あらためて強く思うのですが,登校拒否や引きこもりは決して否定的に受けとめられるべきことではありません。今の子どもたちや青年・若者だからこその「明るい話」です。「明るいなんてトンデモナイ!」というのが多くの人たちの見方・考えでしょうが,それは思い込みや先入観,固定観念によるものです。どうして明るいと言えるのか,詳しくはこの冊子に繰り返し出てきますので,じっくり読んでいただきたい。きっと新しい世界が開かれるものと思います。そのポイントだけでも早く知りたいという方には,「登校拒否は“明るい話”」(209~215ぺ)を初めに読まれるようおすすめします。


僕は,そこで「登校拒否は“明るい話”」と言われた板倉聖宣(いたくらきよのぶ)さん(1930~)の考え方を紹介しています。この冊子は他にも随所で,板倉さんの「ことわざ・格言」や発想法を活用して,登校拒否や引きこもりについての見方・考え方を掘り下げています。

板倉さんはたのしい授業・仮説実験授業を提唱した人です。板倉さんは,その授業がもっとも大事にしていることについて,それは
「自分が自分の主人公であるような人間,そういう人間を作る,というよりも守り育てる」ことだと言っています(『仮説実験授業の研究論と組織論』仮説社,1988年,16ペ)。


今回のこの冊子のタイトルの始まりは,板倉さんの上の文章から拝借しています。本文には,僕の文章ですが
「大人も子どもも自分の人生の主人公として生きる!」といった表現が何度も登場します。他者や世間,学校や会社・官公庁といったものが主人公ではなく,「自分が自分の主人公」なのです。そのことを私たちにはっきりさせてくれている。ということからも,「登校拒否も引きこもりも明るい話」(「親の会」ホームページの標語)なのです。


22年間続けてきて,鹿児島の親の会のなかから「いい言葉」がたくさん生まれてきました。「“心配”しないで“信頼”する」「人の話はわが話。わが話はみんなの話」「解決の道は自分のなかにある」「“しない”と“する”ようになる」「とても辛いことだってじつは明るい」などです。僕らは月例会のようすを毎月,会報にまとめ発行してきました(2002年夏以降の分が,各会報の3分の1程度ですが,HPで見られます)。昨年(2010年)1月の会報のタイトルは
「自分がまっ先に幸せになる!」でした。この冊子のタイトルは,ここからもとっています。


ここ1年半ほどですが,フランスの哲学者・アラン(1868~1951)の幸福論から,僕らはいっぱい刺激を受けてきました。以前から「自分を一番大切にする」ことが問題解決にあたって,それこそ一番大切なことだと考え実践してきましたが,アランはそのことを見事に表現してくれていました。

「われわれが自分を(が)愛する人たちのためになすことができる最善のことは,自分が幸福になることである」と。

各人はみんな主体的です。相手が子どもであれ大人であれ,人が人をどうにかしようと考えることは,じつはそれこそトンデモナイ!ことです。でも,自分のことだったら自分次第でできます。そう思った人から,どんどん自分を大切にしていく。そのひとつの表現の仕方が「まっ先に幸せなる」です。このことは,他の人にとってもとても喜ばしい大事なことではないでしょうか。


折しも東日本大震災により,いま被災地はとても大変です。震災の発生からひと月近くたっても未だ被害の全容がわかりません。原発の事故,被害も深刻で,こちらは終息の見通しさえ不明です。そうしたとき,いわば非・被災地である西日本の私たちに期待されていることはなんでしょうか。あまりの災害のひどさに意気消沈し静かにしていることでは絶対にありません。条件がいい,悪くない私たちは,その条件を生かしてできる限りの支援をおこなうこと,そして
私たち自身が今まで以上に元気に幸せに毎日を送ること,そうしたことが被災された人たちがたいへんな困難のなかでも生きぬいていく,確かな希望にもなるのではないでしょうか。

アランの言う「幸福になることはまた,他人に対する義務でもある」という考え方が,大震災からの復旧・復興の場合にもあてはまるように思います。


それにしても被災地はもちろんのこと,いま日本の社会は全体として,たいへんな難局にあります。これまでもいろいろなところで改革が求められてきましたが,今回の大震災をきっかけに,日本の社会は根本から変わっていかなくてはならないように思います。復興には何年も何十兆円もかかることでしょう。新たな財源が必要なだけではなく,いままでの支出の無駄を本当になくさないといけません。公共事業費や軍事費にだけ無駄があるのではありません。


親の会を22年間やってきて,不登校や引きこもりに関係する教育や医療,福祉・労働の分野の予算にも,不要なものが少なくないと思います。「不登校や引きこもりは困ったものだ。なくさないといけない」といった考え方を基本にした取り組みや施策は,行えば行うほど,じつは
子どもたちや若者への支援にならないどころか,逆に彼ら彼女らの自立の足を引っ張っているのです。


鹿児島の親の会では,お金をほとんどかけずに,また特別なことはまったくしないで,かかわった多くの親御さんが,子どもたちが,そして兄弟・姉妹・家族がとても明るく元気です。それは,不登校や引きこもりについての見方が肯定的で,行政や多くの専門家のそれとは根本的に違うからです。
子どもはもちろんのこと,親であれ学校の教師であれ,不登校や引きこもり自体には悪者などいないのですから,要は見方次第で誰でも明るくなれるのです。


この冊子から,みんなが明るく元気になれる,不登校や引きこもりについての新しい見方や考え方,対処の仕方などを知っていただけたらとてもうれしいことです。ちょっと見方や考え方を変えるだけで,新しい世界が目の前に広がってきます。


記事はだいたい,新しい順に並べていますが,特段の意味はありません。目次を見て,どこからでもご覧いただきたいと思います。

親の会の代表世話人でもある内沢朋子の文章を終わりのほうに二つだけ入れています。その一つは6年前の僕の病気についてふれたものです。つれあいのトモちゃんの支えと親の会のみなさんのはげましがあって,僕は一命をとりとめることができました。これほどありがたいことはありません。

はげましてくださったみなさんに,あらためて感謝し,お礼を申し上げます。


今回の大震災の被災者の方々もそうですが,命がある,生きているということは何ものにもかえがたいことです。僕自身の筆では,最後に「2005年秋のこと」を記しています。そのとき僕がどのように生きることに必死だったか,また別稿(「不安を否定しない」など)では,命が助かった後(なのに)どれほど不安に襲われたことかも,綴っています。


いつどんな時も「自分が自分の主人公!」。自分を一番大切にする。明るく元気がいっぱいのときだけでなく,不安がいっぱいだったら,そうしたときの自分も否定せずに認め,いつも,いま現在を一所懸命に生きる。そして自分が「まっ先に幸せになる!」


こうした僕らの考え方の効用は,不登校や引きこもりのことに限りません。当人や家族の病気や介護のことにかかわっても,またいろいろ人間関係がとても大変と思われる場合でも,その有用性が確かめられてきたように思います。


この冊子を手にしてくださってありがとうございます。
お読みになって,なるほどと思われましたら,みなさんの日常の生活のなかでも活かしてくださるととてもうれしいです。


また,トモちゃんの名司会のもと進行していく「親の会」月例会を一度,ライブでたのしまれることもおすすめします。



2011年4月4日

内沢 達
(うちざわ たつし)





この冊子(A5版・全247ぺージ、1冊千円)ご希望の方は、会までメールをお願いします。

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最終更新: 2014.3.21
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